私募投資顧問部 上席主任研究員
菊地 暁
「私募REIT運用あり」の運用会社はESG取組率が高い結果に
強まる財務インパクト開示義務化の流れには、早めの準備が必要
~「不動産私募ファンドに関する実態調査」(2025年1月調査)の結果から~
要約・概要
不動産証券化協会・三井住友トラスト基礎研究所は、不動産運用会社を対象とした「不動産私募ファンドに関する実態調査」を実施しており、直近10回ではESGに関する取組状況を調査している。
2023年7月調査から調査項目を追加し、より具体的な取組状況を把握しているが、調査開始以来ほぼ一貫して伸長していたESGへの取組率(回答社全体のうち取り組んでいるとする回答社の割合)は、2022年以降、全体的に一服した感がある。そうした中でも、ほとんどの項目において、私募REIT運用会社の取組率は私募REITを運用していない会社より高い結果となり、改めて私募REIT運用会社のESG取組意識の高さが確認された。
気候変動への対応に関しては、「投資家からの開示要請の高まり」を「意識している」との回答割合は全体集計で73%、私募REIT運用会社では87%と高い結果となった。その一方で、気候変動への対応方針を社内で決定しているとの回答社は43%にとどまり、「戦略」と「指標と目標」の設定等の実施は23~42%であった。私募REIT運用の有無によるクロス集計では、こちらも「私募REIT運用あり」の回答社は気候変動への対応が進んでいる結果となった。現在、気候変動に関する財務インパクトの開示要請はますます強まっている。サステナビリティ基準委員会は日本版サステナビリティ基準(2025年3月5日)を公表した。この基準の適用時期については定めてられていないが、将来的には、サステナビリティ開示基準に従って開示を行うことを要求する法令が制定されれば、対象企業は「Scope3 」をはじめ、様々な気候関連情報の開示が義務化されることになろう。不動産業はGHG排出量のうち、Scope3の割合が9割以上を占めるとのデータがある。開示に至るまでのデータ収集・整理・分析、さらにはGHG排出量削減等の中長期目標を設定、GHG排出量削減に向けた移行計画の策定等、やるべきことは多い。すべての不動産会社が開示義務化の対象とはならないものの、投資家は気候変動に関する財務インパクトの開示要請を強めていることから、早い段階で開示に向けた準備が必要となる。
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