私募投資顧問部 副部長 上席主任研究員
米倉 勝弘
不動産セキュリティトークンのファンド出口戦略に死角はないか
要約・概要
- 2021年に本格始動した日本の不動産ST市場は、資産規模を着実に拡大している。特に2025年以降は拡大ペースがさらに加速しており、その要因の一つとして対象不動産の大型化が挙げられる。対象不動産の大型化は、規模のメリットを通じたコスト効率の向上に寄与し、その結果としてエクイティ投資家のパフォーマンス改善にもつながる。
- 不動産ST市場のさらなる拡大には、個人投資家層の裾野拡大が重要な要素となる。野村総合研究所によると、準富裕層、富裕層、超富裕層の世帯数および純金融資産はいずれも増加しており、不動産ST市場への資金流入が期待される。
- 日本の不動産ST市場では、早期償還により運用を終了したファンドが既に複数存在し、いずれのファンドにおいても運用実績利回りは当初想定利回りを上回っている。ただし、早期償還は短期間で資金効率を高める一方で、運用期間の短期化により総分配額が減少する可能性がある。そのため、再投資リスクを伴い、長期保有・分散投資・安定収益重視の戦略へはネガティブな影響が及ぶ可能性があることについて理解しておく必要がある。
- 現時点における運用実績は早期償還による事例のみであるが、確定した運用実績利回りが観測されたことにより、運用期間終了時における対象不動産の売却、すなわちファンドの出口戦略の重要性が改めて認識されている。
- 不動産STは相対的に高いレバレッジを活用できる投資主体であり、足元ではJ-REITや私募REITに比べてバイイングパワーが強い。一方で、価格競争力では優位に立つものの、低LTV主体であるREITが出口の買い手となりにくく、物件売却先候補が限定される可能性がある。将来の不動産市場を正確に予測することは困難であるが、組成段階において対象不動産のバリューアップや売却先の想定を含めた出口戦略について、あらかじめ投資家とイメージを共有しておくことは、今後の投資需要を喚起するうえで重要である。
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